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“医療と介護はケアの両輪”と考え、地域の認知症の方を親身に支え続ける
<大阪市東住吉区 葛本医院>

院長 葛本佳正先生 院長 葛本佳正先生

大阪市の南東部、東住吉区の住宅街にあり、約70年にわたって地域の医療を支え続けてきた葛本医院。3代目院長を務める葛本佳正先生は、認知症の診療にも力を注ぎ、関連施設と細やかに連携しながら、認知症の方とそのご家族に寄り添ったケアを提供しています。

大学病院の勤務医時代に認知症に向き合う

葛本医院の院長を務める葛本佳正先生が、認知症の診療に向き合うようになったのは、大学病院の神経内科に勤務していた2000年頃のこと。

「1998年に医学部を卒業した後、神経疾患に興味があったので神経内科の医局に入りました。当時は、認知症を神経内科で診ることはあまりなくて、主に精神科が診ていたと思います」と、葛本先生は当時を振り返ります。

2000年代の後半になると、認知症に関する情報が社会に徐々に広まったこともあり、初診で神経内科を訪れる方が増えてきました。

「幻覚や、夜興奮して眠れないといった精神的な症状を訴える方は精神科、物忘れを訴える方は神経内科と、病院の受付で割り振っていたと思います。今でこそ精神科での診療は一般的になってきましたが、当時は、精神科に抵抗を感じる方が多かったので、神経内科を訪れる方が増えたのではないでしょうか。私も認知症には関心がありましたので、積極的に診ていました」

大阪市の認知症疾患医療センターに指定

先々代が開業して以来約70年間、東住吉区北田辺の地域医療を支え続けている葛本医院。2008年、葛本先生は同院の院長に就き、それまで標榜していた内科・小児科に加えて、脳神経内科の診療を開始しました。頭部CT、頸動脈エコーを導入し、慢性硬膜下血腫のような“治る”認知症との鑑別を行うとともに、アルツハイマー型などの認知症や脳梗塞の方の診療に力を注いできました。さらに2017年9月には、大阪市認知症疾患医療センター(連携型)にも指定されました。

「東住吉区では、高齢者が年々増える傾向にありますので、初診の方の鑑別診断を行うこと、症状に応じて大学病院などと連携することは、地域の認知症ケアを提供するうえで当院の大事な役割だと思っています」

すぐには告知せず信頼関係をつくりながら説明

CT撮影は、可能な限り初診時に CT撮影は、可能な限り初診時に

同院に認知症の初診の方が来院されるきっかけとしては、かかりつけ医や地域包括支援センターなどからの紹介もありますが、もっとも多いのは、ご家族が物忘れを心配しての来院です。

初診では、まず問診し、できるだけその日のうちに頭部CTを撮影。慢性硬膜下血腫など手術が必要な疾患が確認された場合は、すぐに大学病院などを紹介します。こうしたスムーズな対応は、同院の認知症診療の強みになっています。

アルツハイマー型認知症などが疑われるときは、長谷川式簡易評価スケール、MMSE(認知機能検査)、血液検査、甲状腺検査などを2、3回の診察で行い、診断をつけます。告知するときは、ご本人やご家族に、すぐにはっきりと認知症だと言わないよう配慮しています。

「大学病院などで診断をつけて、かかりつけ医に返す場合は、すぐに告知すべきだと思います。しかし当院を受診される方は、内科での治療と合わせて長いお付き合いになることも少なくありません。初診の方は軽度であることが多いですから、時間をかけて信頼関係をつくりながら、認知症状やケアについて説明するよう心がけています。説明を受けて不機嫌になる方もおられますが、次回の受診を拒否される方は、ほとんどおられません」

新型コロナウイルスの影響で外出が減り、ADLやQOLが低下

新型コロナウイルス感染症の流行で、行政が不要不急の外出を控えるよう呼び掛けたことなどが影響し、2020年4月から6月にかけて、同院を訪れる認知症の初診の方はほとんどいませんでした。しかし7月に入ってからは一転して増えてきました。

「暑さの厳しい夏場は、例年、ご高齢の方の来院は少ないのですが、今年は多かったですね。新型コロナウイルスの影響で外出する機会が減ったため、筋力が衰えて、ADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)の低下がみられたことが、受診のきっかけになったのではないかと考えています」

そう指摘する葛本先生は「認知症状がある方を含め、ご高齢の方は普段からできるだけ身体を動かすことが大切」だと訴えます。

「ご高齢の方は感染に対して日頃から十分注意しなければなりません。しかしあまり萎縮しすぎて運動不足になったり生活に刺激がなくなったりすると、ADLやQOLが下がってしまいます。ときには外出して身体を動かすべきですし、家の中でも体操を心がけていただくよう呼び掛けています」

よい介護サービスを受ければ認知症の予後は変わる

BPSD(周辺症状)が顕著な方は、隣の阿倍野区にある大阪市立大学医学部附属病院などを紹介しますが、葛本医院で認知症の診断をつけた多くの方は、同院で治療しています。

「今のところ認知症は根治できませんから、医療でやれることには限界があります。したがって、認知症のケアには適切な介護が不可欠。よい介護サービスを受けると、予後が変わります」と葛本先生は語ります。

認知症の初診では、介護保険制度を利用されていない方に、行政が発行している解説冊子を手渡し、地域包括支援センターで相談するよう勧めています。しかし、介護サービスを受けることに消極的な方もいます。

「自分はまだ介護を受けるほどの年寄りではないとお考えなのでしょう。そうした方には、デイサービスで身体を動かせば血流がよくなって認知機能が改善するかもしれませんよ、などと丁寧に説明し、できるだけ利用してもらうようにしています。車の両輪のように、医療と介護の両方をうまく回していくことが、主治医の役割です。特に当院の周辺地域では老老介護の世帯も増えつつありますので、食事などの日常生活を支える介護サービスは今後さらに重要になってくると思います」

地域の関連機関との連携、啓発活動にも注力

葛本先生は認知症の啓発活動にも積極的に取り組んでおり、昨年には、同院を受診されている方に対して勉強会を開催しました。この春に2回目を予定していましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で、残念ながら開催は見送り。しかし今後、状況が落ち着いたら再開したいと考えています。

「初回は、来院された方への説明として開催したのですが、今後はウェブサイトなどで告知して、一般の方にも情報を発信したいと思っています」

また、葛本先生は、地域の行政や医師会が開催する啓発活動にもたびたび参加し、講師などを務めています。認知症疾患医療センターである葛本医院と行政との結びつきは強く、各センターが集まり年に数回開催される会議では、行政の方針や取り組みを確認する一方、診療の現状などを報告し、意見交換を行っています。

「認知症ケアにおいて、地域の医療と介護、そして行政の連携は非常に重要です。当院もこの連携をさらに強くしつつ、診療と啓発に努めていきます」

 

 

取材日:2020年8月20日
葛本医院の外観

葛本医院

〒546-0044
大阪市東住吉区北田辺4-11-21
TEL:06-6719-0929

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