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院内外の多職種で連携し、認知症の人とご家族の生活を支援
<神奈川県横須賀市 医療法人社団ナーブ・ケア・クリニック>

理事長・院長 久保篤彦先生 理事長・院長 久保篤彦先生

神奈川県の南東、三浦半島の中央部に位置する横須賀市。京浜急行・県立大学駅の改札口を出てすぐの場所にあるナーブ・ケア・クリニックは、1991年にMRI画像センターとして開設されました。現在は脳神経外科専門のクリニックとして外来診療を行うとともに、併設のナーブケア在宅クリニックでは在宅医療も提供しています。認知症に関しても、MCI(軽度認知障害)の段階から最期の看取りまで、ご本人とご家族にとって“居心地のよい”生活環境を整えるため、院内外の多職種間で協力してサポートしています。

患者さんの生活や人生に寄り添う医療を目指して

日本脳神経外科学会専門医である久保篤彦先生は、神奈川県内の急性期病院で主に救急対応や外科治療に従事した後、2016年にナーブ・ケア・クリニックに入職。2020年6月からは同クリニックの院長と、運営母体である医療法人社団の理事長を務めています。

前理事長が大学病院の医局の先輩だったことから、20代のころから非常勤の医師として同クリニックで勤務してきた久保先生。同クリニックで在宅医療にも携わってきたため、次第に「治療を提供するだけでなく、患者さんの生活や人生にも関わっていきたい」という思いが強くなっていったと言います。

「急性期病院では患者さんと関わる時間が限られていて、自分のパフォーマンスが行き届かず、患者さんを満足させられていないのではないかと感じていたのです。患者さんの“生活”に自分の“サイエンス”を役立てるには、もっと患者さんと関わる時間を増やしたほうがよいのではないかと考えるようになりました」(久保先生)

MRIと併せてVSRADを活用し、早期発見に努める

もともとMRI画像センターとして開設された同クリニックでは、脳神経外科専門のクリニックとなった現在も常時MRI検査を実施することができます。近隣の医療機関から画像診断の依頼を受けることも多く、久保先生は「まずは正確に診断することが、地域の認知症医療のなかで当クリニックに求められている役割だと思います」と語ります。

診断時の画像検査としては、MRIに加え、海馬の萎縮度を数値で評価するVSRAD(早期アルツハイマー型認知症診断支援システム)も活用し、MCIを含め認知症の早期発見に努めています。さらに、長谷川式簡易評価スケールやMMSE(認知機能検査)などの神経心理検査の結果と、問診内容を踏まえて診断しています。

診断後は、適切な薬物治療を行い、経過を見ながら、必要に応じて介護サービスにつなぎ、QOL(生活の質)の維持を目指します。

また、久保先生は「認知症の方には、できる限り住み慣れた場所で生活していただきたいと思っています」と語り、ご家族には「困った言動にもニコニコと対応していれば、ご本人も笑顔で協力してくれるようになりますよ」といった対応のコツをアドバイスしています。

「ご家族のなかには『脳トレドリルなどで勉強すれば、認知機能が元に戻るのではないか』と考える方もおられます。しかし、低下してしまった認知機能を取り戻すのは難しいのが実情です。失った機能を取り戻そうとせず、残されている機能を大切にしていくことで、ご本人もご家族も気持ちが楽になり、穏やかに暮らせるのではないでしょうか」(久保先生)

ご家族が認知症を理解し、受け入れられるよう支援

2020年4月に入職した岩田盾也先生は、脳神経外科専門医として主に急性期医療に従事してきました。もともと地域医療に関心を持っていた岩田先生は、地域の困っている人たちに自分の持つ知識や技術を還元したいという思いから同クリニックで働くことを決めたと言います。

医師 岩田盾也先生 医師 岩田盾也先生

入職当初は急性期とは畑違いの領域に戸惑うことも多かったそうですが、「現れた症状が認知症によるものか別の理由によるものなのかを即座に見分ける嗅覚は、急性期医療の経験の中で培われたものだと思います」と話します。初診時の問診では、アルツハイマー型認知症なら無気力、前頭側頭型認知症なら脱抑制、正常圧水頭症なら歩行障害といった典型的な症状を聞き漏らさないように確認し、診断に役立てています。

また、急性期病院では抗精神病薬や抗不安薬、抗てんかん薬などを使う機会が多かったことから、BPSD(周辺症状)に対しても必要に応じて薬物治療を行い、ご家族の介護負担の軽減につなげています。

一方で、ご家族が病気を受け入れ、ご本人に優しく接することでBPSDの改善がみられることもあるため、診察時には時間をかけてご家族の話を聞き、ご本人の困った言動が認知症によるものであることを説明して理解を促しています。病気を受け入れるまでには時間がかかることもありますが、ご家族に覚悟ができるとご本人の症状も落ち着いていくことが多いと言います。

「ご家族がニコニコしながら診察室に入ってきて、『昨日もまた怒っていました』、『今週も徘徊してしまったんですよ』などと、ご本人の言動を笑って話すようになると、ご家族の受け入れ態勢が整ったなと思い、ホッとします。お話をお聞きするしかできないことも多いのですが、ご本人やご家族に喜んでいただけると医師としてやりがいを感じます」(岩田先生)

3人の看護師が診療をサポート

看護師 山下聡子さん 看護師 山下聡子さん
問診する久保先生と横について診療をサポートする看護師 問診する久保先生と横について
診療をサポートする看護師

同クリニックには山下聡子さん、春裕子さん、一條裕子さんの3人の看護師が在籍しています。外来ではご家族から普段の生活の様子を聴取するだけでなく、診察に同席して医師の説明が理解できていない方には平易な言葉でもう一度説明して患者さんの理解をサポートしています。

「医師には話しにくいことも、看護師には話してもらえることがあります。ご本人とご家族の関係がうまくいっていないときでも、看護師がその場にいることで雰囲気が和らぐこともあります」(山下さん)

また、初診時の神経心理検査も看護師が行っています。ご本人に病識がないこともあるため、「検査項目には、とても簡単な質問も含まれているので、ご本人のプライドを傷つけないように配慮しています」という一條さん。春さんも「時間がかかる検査では、途中で疲れたり飽きたりしないよう、合間に世間話を挟むなどしています」と語ります。

住み慣れた場所で長く生活できるよう、在宅医療に注力

同クリニックは“ナーブケア在宅クリニック”を併設しており、外来通院が困難な方を対象に月に2回の訪問診療と、緊急時の往診を行っています。医師と看護師は、外来診療と在宅医療の両方を担当しており、久保先生は「MCIを含め認知症の発症初期から終末期の看取りまで、ご本人やご家族と長く関わっていることが当クリニックの特徴です」と話します。

近年では認知症の人の一人暮らしや、認知症の人が認知症の人を介護する認認介護が増えています。一人暮らしをする認知症の人のなかには、鍋を焦がしてしまう、水は出しっ放しという方もいるそうですが、いつも笑顔で幸せそうなことから、一人暮らしを続けてもらっています。その方には、ガスコンロを電気ポットに替えてもらい、私たちが訪問する際に、冷蔵庫に賞味期限切れの食品が入っていないか、電気ポットに水が入っているかをチェックするといった対策を講じて、ご自宅での生活を見守っています。また、ご本人の病状やご自宅の様子から、介護サービスの追加が必要だと判断した場合は、看護師がケアマネジャーに連絡を取り、サービス内容の調整を提案しています。

「ヘルパーさんの力も借りて危険を回避してあげれば、住み慣れたご自宅での生活を続けられる方もおられます。一人暮らしは無理だと決めつけず、安全に暮らせる環境を個別に整えることが大切だと考えています」(久保先生)

認知症の人をどう看取るかが今後の課題

看護師 春裕子さん 看護師 春裕子さん
看護師 一條裕子さん 看護師 一條裕子さん

在宅医療を提供するなかで、山下さん、春さん、一條さんは「認知症の方の終末期をどう支えるのかが、今後の課題」と口を揃えます。

「ご本人は延命治療について判断できないことが多く、ご家族が高齢であれば理解が難しいこともあります。看取りについて話をするのを嫌がる方も多いのですが、普段から少しずつ、ご本人やご家族の意向を聞き出せたらと思っています」(山下さん)

春さんは、「私たちからすればご自宅で看取ることが可能だと思っても、最期は病院や施設に移る方が多いのが実情です。それが不幸なことだとは思いませんが、ご本人の価値観や希望でなく周囲の意向で決まってしまうため、何が正解なのかわからないと感じます」と、胸の内を明かします。一條さんも春さんの言葉にうなずきながら、「実際に介護されるご家族には大変なご苦労があるでしょうし、もう家で看るのは難しいとおっしゃるのも無理はないと思います」と語ります。

「だからこそ、普段からご家族など介護される方とコミュニケーションを取り、困ったことや大変な状況を早めにキャッチして先生に伝え、ケアにつなげるよう心がけています」(一條さん)

ご本人やご家族にとって居心地のよい場所をつくりたい

在宅医療をスムーズに提供するため、同クリニックでは月に1回、医師と看護師、隣接する薬局の薬剤師らが参加する在宅カンファレンスを開催し、情報を共有しています。また、ケアマネジャーが主宰する担当者会議には主に看護師が参加して、よりよい介護サービスの提供につながるよう、在宅診療の内容や服薬状況を伝えています。

久保先生とクリニックの皆さん 久保先生とクリニックの皆さん

院内外の多職種連携が順調に機能するなか、岩田先生は今後の課題として「認知症の方やご家族が集うコミュニティづくり」を掲げます。

「一人暮らしの認知症の方や認認介護、高齢者が高齢者を介護する老老介護など、家族という単位ではケアできない方々を支えるために、地域コミュニティのさらなる充実が必要だと思います」(岩田先生)

まずは、認知症カフェの運営を考えているという岩田先生。久保先生も「認知症は、現時点では“治す”というよりも“進行を遅らせて付き合っていく”病気です。医療者としてはジレンマを感じることもありますが、だからこそ、ご本人やご家族が安心して過ごせる、居心地のよい場所を確保することが大切なのではないでしょうか」と語り、岩田先生の活動を後押しします。

医療の提供はもちろん、認知症の方とご家族の生活を守ることにも力を注ぐ、ナーブ・ケア・クリニックの皆さん。さまざまな課題や悩みを抱えながらもご本人やご家族に寄り添い、院内外の多職種間で協力しながら“居心地のよい環境づくり”を進めていきます。

 

 

取材日:2020年9月11日
医療法人社団ナーブ・ケア・クリニックの外観

医療法人社団ナーブ・ケア・クリニック

〒238-0012
神奈川県横須賀市安浦町2-19
TEL:046-824-7638

施設のホームページへ

ナーブケア在宅クリニック

〒238-0012
神奈川県横須賀市安浦町2-19
TEL:046-828-3637

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