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脳神経内科と精神科の専門病院として、多職種のチームで最期まで支える
<高知県南国市 医療法人つくし会 南国病院>

理事長・院長 中澤宏之先生 理事長・院長 中澤宏之先生

県庁所在地・高知市の隣に位置する南国市の南国病院。先代院長が開院して以来、精神科と脳神経内科の専門病院として50年以上にわたって地域医療に貢献してきました。院長の中澤宏之先生率いる多職種のスタッフが認知症医療に尽力、病棟も備えて“認知症の人を断らない”病院として、地域の信頼を集めています。

行動・心理症状の治療も行い、かかりつけ医からも数多く紹介

南国病院では、精神科医4名(内非常勤1名)、脳神経内科医2名で認知症医療にあたっています。精神科病棟60床を有し、BPSD(行動・心理症状)のある認知症の人の入院も積極的に受け入れています。脳神経内科と精神科の病院として地域に定着していることから、かかりつけ医からの紹介も多く、BPSDの治療を目的として紹介されることも少なくありません。

脳神経内科と精神科を専門とする中澤先生は、「BPSDがあらわれると在宅介護が困難になりますが、当院は認知症の方をできるかぎり断ることなく、最期まで関わるのが特徴です」と語ります。

「精神科訪問看護を行っているので在宅の患者さんであれば訪問看護師が支援しますし、外来でも入院でも多職種が関わるチーム医療できめ細やかに対応するのが当院の強みです」(中澤先生)

同院は完全予約制をとっており、認知症を疑って受診した人を、初診時に特に時間をかけて診察することができます。詳細な病歴や家族歴、生活歴をご家族に訪ね、特にここ数年の生活の変化に着目して聞き取っていきます。初診時は多くの情報を先入観なく収集できる機会だと中澤先生は考えているからです。

それらの情報と、神経心理検査や頭部MRI検査の結果から、約8割の人は初診当日に診断がつくそうです。中澤先生は、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症など神経変性疾患、脳梗塞のような脳血管障害など認知症の原因はさまざまであることと、ご本人の認知症の原因が何であるかを説明し、治療方針を伝えます。

「認知症医療はご家族の介護負担の軽減も重要です。介護福祉サービスの利用をご提案し、積極的に導入することも認知症の治療には意義があると説明しています」(中澤先生)

リラックスして検査が受けられるよう配慮

臨床心理士 横山望さん 臨床心理士 横山望さん

認知症の診断に際して、同院では長谷川式簡易評価スケール、MMSE(認知機能検査)、CDR、FASTと4種類の神経心理検査を行っており、検査を担当しているのが臨床心理士の横山望さんです。横山さんは、検査を前に緊張していたり不安を感じていたりする患者さんが多いことから、「よく眠れましたか?」「今日の調子はどうですか?」と優しく声をかけ、リラックスして検査を受けられるよう配慮しています。野菜の名前を答えてもらう検査を行う際に、高齢者の方には野菜の栽培経験を持つ人が多いことから、それを話題に取り入れることもあります。

横山さんは、より正確な検査をすることを心がけるとともに、検査中にご本人を注意深く観察しています。

「ご本人の様子、質問の理解度、耳の聞こえの度合い、不安そうにしていないかなど、気がついたことがあれば、診察や診断の一助になると考え、メモにして先生に渡しています」(横山さん)

また、横山さんは、ご家族に困りごとがあっても、誰に相談して、どのように解決すればよいかわからない人が少なくないと感じています。

「ご家族には『こういう情報は診察時に先生に伝えて、こういう話は地域連携・医療相談室で相談するといいですよ』と、相談先をお伝えすると安心されるようです」(横山さん)

多職種がチームとなって入院患者をサポート

病棟看護師 大山千賀さん 病棟看護師 大山千賀さん
カンファレンスの様子 カンファレンスの様子

精神科病棟には、もともと精神疾患があり高齢になって認知症を併発した患者さんや、BPSDがあらわれた認知症の人などが入院しています。精神科病棟を担当する看護師の大山千賀さんは、「認知症の方は、入院による環境の変化に適応できなかったり、不安になったりすることがあります」と指摘します。大山さんは、認知症の人の不安を解消するため、表情や声のかけ方、対面するときの体の姿勢や位置などに気を配り、生活歴を把握してケアに活かしています。

病棟では、週2回、それぞれ30分のカンファレンスが行われ、医師、薬剤師、看護師、栄養士、作業療法士、精神保健福祉士などが参加して患者さんの情報を共有し、課題の解決を図っています。各職種のスタッフがそれぞれの専門分野の観点から意見を出し合うことで、生活リズムの調整や適切な薬剤の投与などが行われ、症状の改善につながるといいます。

「BPSDのある方がどの時間帯に症状が強くなるかを観察し、カンファレンスで適切な薬剤や投与のタイミングなどを話し合って、患者さんに合わせた薬剤調整ができますし、作業療法の介入を検討することもできます」(大山さん)

作業療法を取り入れ、退院後を見据えたリハビリを

作業療法士 今城恵理さん 作業療法士 今城恵理さん

精神科病棟では、非薬物療法も重視し、作業療法を取り入れて心身のリハビリテーションを行っています。作業療法では、さまざまな作業を通して、心身機能の改善を図り、日常で必要となる動作などができるようにサポートします。精神科作業療法室に所属する作業療法士の今城恵理さんは、「認知症の方は生活リズムが崩れることもありますが、午前と午後に作業療法を行うことで、日中は活動をして夜は眠るという本来の生活リズムに整えていくことにもつながります」と言います。

毎日20~25人の参加者を対象に体操や歌、脳トレなどの集団プログラムを用意しますが、書道の得意な人には字を書いてもらうなど、できるかぎり個々の参加者に合った、ご本人の力を活かせる作業を行うと、不安が軽減したり感情が安定したりすることもあります。

作業療法は退院後の生活を見据えて行う場合もあり、退院後に自宅に戻る人には、施設に入所する人とは異なり家事の練習が必要になるなど、退院先によって作業の内容を変える必要があると今城さんは指摘します。地域連携・医療相談室の精神保健福祉士などと連携を取り、退院後の生活を想定できるよう情報を入手してリハビリに反映させています。

「退院前の自宅訪問にも同行しており、実際に介護サービスを利用してもらって自宅での生活が可能かどうかを確認し、そこで得られた情報をサポートに取り入れています」(今城さん)

相談室が地域と病院、医療と介護の橋渡しに

精神保健福祉士 山本真里さん 精神保健福祉士 山本真里さん

同院の地域連携・医療相談室は、看護師や精神保健福祉士、社会福祉士が、受診や入院の相談に乗ることはもちろん、入院患者さんの退院支援、各種制度に関する情報の提供、外部機関との連絡など、地域と病院の橋渡しを行う役割を担っています。地域連携・医療相談室に所属する精神保健福祉士の山本真里さんは、ご本人やご家族から話を聞く際には、病気や福祉サービスについてどの程度理解しているか、家族の協力体制、介護力、経済力、依存“力”などに注意を払っています。

「依存というとよくないことのようですが、健康な方はさまざまな依存先を持っています。ところが、病気や認知症になると、依存先が限られ、ご家族など1ヵ所に集中してしまうので、ご本人もご本人をサポートする方も依存先を増やすことが大切なのです」(山本さん)

同院では外来、入院のいずれの患者さんにも職種を問わず関わるよう心がけるとともに、入院患者さんに対しては2人の精神保健福祉士が入院時から退院に向けた支援を行います。地域で暮らすための壁になっていることを探り、他職種の意見も聞きながら壁を小さくしたりすることで、壁を越える策を練っています。また、病棟でのカンファレンスでは、時にはご家族にも参加してもらい、病状の報告や退院後に向けた相談なども行っています。

地域連携・医療相談室 外来看護師 井河里佳さん 地域連携・医療相談室
外来看護師 井河里佳さん

地域連携・医療相談室と外来を兼務する看護師の井河里佳さんは「当院内の多職種の連携と院外との連携により、地域から当院に入院して、また地域に戻っていくという流れができています」と語ります。

「介護保険を利用していない方であれば地域包括支援センターにつないで在宅サービスを組み立てて地域で暮らし続け、BPSDがあらわれれば当院に入院していただき、落ち着けばまた地域に戻ってもらうということができています」(井河さん)

認知症初期集中支援チームにも参加、認知症と共存できる社会へ

各市町村では、認知症の疑いがあるのに医療や介護につながっていない人を支援するために、認知症初期集中支援事業を行っています。南国市でも、2015年度からモデル事業として取り組み、翌2016年度から本格的に開始しました。同院はモデル事業だった2015年度から事業に関わり、中澤先生をはじめとする多職種のスタッフが認知症初期集中支援チームに加わっています。

中澤先生は、「事業が始動した当初は、チームが介入したときにはすでに認知症がかなり進行していた方も多く、対応に追われることが非常に多かった」と当時を振り返ります。チームの活動の結果、始動から2年ほど経過すると、進行した認知症の人をひと通り医療や介護につなぎ終わり、初期の段階の人や認知機能が低下しても地域でトラブルを起こす前に介入することができるようになりました。

「南国市は地域包括支援センターが1ヵ所だけなので、情報が集約され、対応がしやすかったというメリットがあります。現在は、地域からの情報を待つだけでなく、ケアマネジャーの連絡会や民生委員の総会などにスタッフが出向き、認知症に関わる可能性のある職種に対して積極的に働きかけて対象者の把握に努めています」(中澤先生)

初期集中支援事業を進めるなかでも、BPSDで入院が必要であれば同院が受け入れ、同院の機能が問題の解決に貢献してきました。また、地域包括支援センターや福祉との連携が深まり、認知症の人を地域でサポートする社会の構築が進んでいます。

中澤先生は、認知症の人の増加が予想される今後は、かかりつけ医が認知症の人を受け入れて診断・治療できる体制づくりと、かかりつけ医と専門医、福祉・介護のスムーズな連携が重要だと考えています。

「土佐長岡郡医師会の会長として、会員向けに勉強会を開催する立場ですので、勉強会の内容に認知症の症例を必ず盛り込んだり、地域連携のディスカッションを行ったりして、かかりつけ医の機能強化に努めています」(中澤先生)

同院は、チーム医療で認知症の人を支えるだけでなく、地域と連携し、かかりつけ医を育て、認知症と共存できる社会を目指してまい進しています。

 

 

取材日:2020年8月31日
医療法人つくし会 南国病院の外観

医療法人つくし会 南国病院

〒783-0004
高知県南国市大埇甲1479番地3
TEL:088-864-3137

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