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介護関係者との密な連携により
“街の総合内科医”として地域の認知症ケアを支える
<滋賀県大津市 金田医院>

院長 金田吉正先生 院長 金田吉正先生

地元に密着した診療所として、内科全般の診療にあたってきた金田医院は、約20年前から認知症のケアにも注力してきました。地域の介護関係者との連携を図りながら、認知症の方々の毎日を支え続けています。

地域に愛されてきたお返しに積極的な往診を

琵琶湖から流れる瀬田川の西岸側、大津市の静かな住宅地の一角に金田医院が開業したのは1982年のこと。

「昭和の時代からもう38年を数えます。これだけ長くやってこれたのは地域の方々に愛していただいたおかげですね」と語る金田吉正院長の専門は消化器内科ですが、医院での診療は内科全般にわたっており、いわば“街の総合内科”として地域の医療を支えています。外来だけでなく往診に力を注いでいることも同院の特徴であり強み。夜間であれ日曜祝日であれ、患者の方やご家族からの電話には、できるだけ留守番電話は使わず直接電話に出て、必要とあればすぐに往診に向かいます。

「うちの家族は“そこまでやらなくてもいいんじゃないの”と言うのですが、長くこの地で診療させていただいてきたそのお返しとして、私がやるべきことだと考えています」(金田先生)

地域では高齢者だけの世帯が増加傾向に

金田先生が往診に出向いた先で、認知症の疑いのある方が徐々に増えてきたと感じたのは、介護保険制度が始まった2000年頃。

「ご家族が対応に困っておられる様子をたびたびお見かけするようになり、その頃からこの地域でも認知症ケアにしっかり取り組んでいく必要があると考え始めました」(金田先生)

医院の周辺地域には、比較的長くお住まいの方が多いため、核家族は少なく、高齢者だけの世帯、老老介護の世帯も増える傾向にあります。現在、同院で認知症の診療を行っている方の中には、他の病院から紹介された方もいますが数はわずかで、ご家族が気づいて来院される方、消化器等の他の疾患で通院中に物忘れなどが見られるようになった方が多くを占めています。

「身だしなみが不自然だとか、受付での受け答えがスムーズにいかないとか、私ではなく院内のスタッフが気づくこともしばしばあります」(金田先生)

毎日を生き生きと過ごすことが認知症ケアに大切

認知症の疑いのある方は、まず長谷川式簡易評価スケールで検査を行い、日常生活のなかで以前とは変わったことはないか、主にご家族から聞き取りを行います。認知症の診断がつくと、ほとんどの場合はご家族に告知し、診療内容などについて説明します。

「以前と比べれば、告知を受けて驚かれる方、動揺される方は本当に少なくなりました。私が認知症の診療に取り組みはじめた約20年前は、医師の私でさえアルツハイマーは特別な病気だという印象を持っていましたが、今では認知症に関する情報、知識が社会一般に広がったこともあり、告知してケアの方針などをお伝えすると、ほとんどの方が納得し安心されます」(金田先生)

診療にあたっては症状に合わせてお薬を処方しますが「日常生活を生き生きと過ごすことも、認知症のケアには大切」だと金田先生は指摘します。

「毎日を漫然と過ごすのはなく、ショートステイ、デイサービスなどを積極的に活用していただきたいですね。ご家族の介護のご負担を少なくする上でも役立ちますから」(金田先生)

近隣の介護関連施設と密な連携を図る

介護保険制度がスタートした当初から、地域における介護サービスの重要性を強く認識していた金田先生は、自ら複数の介護関連施設の立ち上げや運営に携わってきました。現在、それらの施設の嘱託医を務めるなど、密な協力関係を結んでいます。

ショートステイ南郷 管理者 田中太さん ショートステイ南郷
管理者 田中太さん

金田医院のすぐ南側にあるショートステイ南郷もその一つ。介護支援専門員・介護福祉士で同施設の管理者を務める田中太さんは「利用者の方に身体の不具合があったとき、夜間でも連絡が取れる先生の存在は本当にありがたい」と、金田先生に全幅の信頼をおいています。

ショートステイ南郷はその名称の通り、ショートステイ(短期入所生活介護)サービスを提供しており、田中さんは介護職歴30年を超えるベテランです。同施設には古参のスタッフも多く、15人のスタッフのそれぞれが得意な分野を伸ばしながらサービスを提供していると言います。

「高齢の方がご利用になる当初は、程度の差はあれどなたにも不安やとまどいが見られます。だからこそ我々スタッフと利用者さんとの良好な関係づくりが非常に大事です」と、自らの経験を踏まえて語る田中さんは、さらに「みんなが仲良く楽しく過ごせるように手助けすることを心がけています」と続けます。

その方をよく知ることが認知症ケアの要

ショートステイ南郷の利用者の中には認知症の方もおり、田中さんは「その方の背景や人生など、その方の人となりなどをよく知ることが認知症のケアには非常に大切」だと指摘します。サービスの利用を開始する際には、その人がかつてどのような仕事に従事していたのか、どのような人生を送ってきたのかなどをご家族から詳しく聞くようにしています。認知症の方が話されることが、その言葉だけではわからなくても、過去のお仕事を知っていれば、それに関連することだと気づくこともあるからです。

「利用者さんが『家に帰りたい、帰りたい』と言ったときに、今住んでいる家のことではなく、子供の頃に住んでいた家のことを言っているのであれば、対応の仕方も変わってきます」(田中さん)

また同施設では、利用者に対する介助は少なめにとどめ、その方ができることは可能な限り自分でやってもらうことを方針にしています。その際、それぞれの認知症の方ができることを把握していなければ適切な判断ができません。そのため、あらかじめご家族の方に普段の生活の様子をヒアリングするなどして備えるよう心がけています。

「“あの方が話していたことはどういう意味なのか? どういった介助がいちばんいいのか?” スタッフで話し合うこともよくあります。少し極端にいえば、衣食住のお世話なら家政婦さんで十分。介護の専門職であるからには、利用者さんの生活機能の維持などについて深く考え対応をしなければなりません」(田中さん)

認知症のケアには“生活への刺激”が有効

「ショートステイなどの介護サービスを利用することで、認知症状が改善することもある」と金田先生は指摘します。その大きな理由は“生活への刺激”です。例えば、自宅からデイサービスやショートステイに向かうとき、送迎の車に乗り外の風景を見る。これだけでも日常とは違う刺激が得られます。

「BPSDが見られる方は鎮静させる方向でのケアが必要ですが、そうでなければ、過度にならないレベルでの刺激は認知症の方には有益だと思います」と語る金田先生は、ショートステイ南郷をはじめ協力関係にある施設をこまめに訪問しています。利用者の様子を確認することに加え、医師が顔を出すことが刺激になると考えるからです。

「利用者さん同士のふれあいも認知症の方にはプラスに働くのでは」と田中さんは言います。

「新しい出会いがあり、交流の輪が広がり、互いに思いやる関係ができる。それはご自宅にいてはではできない“社会参加”として有意義なことだと思います。一方、認知症ではない利用者さんも認知症の患者さんを受け入れて守っている。そこに役割を見出しているのではないでしょうか」(田中さん)

医療と介護の密な連携で認知症ケアの拡充を

ショートステイ南郷での利用者の様子は、毎日、連絡ノートに記され金田先生に届けられます。日常の経過を把握することが、以後の診療に役立つケースが多々あるからです。「こうした医療と介護の連携は、今後の認知症ケアを充実させる上で非常に重要」だと金田先生は持論を述べます。

「地域のケアマネさんやホームヘルパーさんからの情報も非常に大事ですので、何かあったらすぐに連絡しあえる関係を日頃からつくっておくことが大切。当院では密な関係がとれています」(金田先生)

こうした介護施設や多職種との連携や、日頃の積極的な往診の結果、認知症の診断のついていない人の発見にも役立っていると言います。その人の普段の病状をしっかりと診ることが重要だと話す金田先生は、今後の認知症のケアを進めていくうえで、ショートステイやデイサービスを個別にではなく一体的に提供する小規模多機能型居宅介護が有望だと考えています。

「いろんなサービスを提供するだけに運営の難しさがあるのは承知していますが、私たち医師がそこを訪問すれば、さまざまな利用者の方に接することができるという利点もあります。ぜひこの地域でも拡充されればと期待しています」(金田先生)

 

 

取材日:2020年8月11日
金田医院の外観

金田医院

〒520-0865
滋賀県大津市南郷1丁目7-1
TEL:077-534-1134

ショートステイ南郷の外観

ショートステイ南郷

〒520-0865
滋賀県大津市南郷1丁目6-10
TEL:077-534-2300

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