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専門医療を提供し、認知症の人とご家族を地域で支える社会を目指す
<栃木県下野市 自治医科大学附属病院>

精神科科長 須田史朗先生 精神科科長 須田史朗先生

栃木県の南部にある自治医科大学附属病院は、46の診療科を標榜し、県南地域だけでなく、栃木県全体、茨城県、群馬県、埼玉県と広い地域に高度な医療を提供しています。2017年には認知症疾患医療センターの指定を受け、認知症医療の拠点となっています。

地域のニーズに応え認知症疾患医療センターの指定を受ける

自治医科大学附属病院は、栃木県の基幹病院として、1974年の開院以来、多様化する医療のニーズに応え続けてきました。同院が位置する県南エリアは医療機関が充実し、豊富な医療資源がありますが、なかでも大学病院として先進的な医療に取り組む同院は地域の信頼を集めています。

認知症医療については、県の要望に応える形で認知症疾患医療センターの指定を受け、精神科が診療にあたっています。精神科科長である須田史朗先生は、「当院は、かかりつけ医や栃木県もの忘れ・認知症相談医(とちぎオレンジドクター)が診断に悩んだときに紹介を受け、MRIなどの検査を行い、きちんと鑑別をするという役割を担っています」と語ります。

最近は、運転免許証更新の際に診断書が必要となり受診する高齢者が増えています。

「運転をする方はもちろんですが、運転をしなくても免許証を持ち続けたいと望む方は多いです。CTやMRI等の機器が整備されていない診療所では正確な診断ができず、かかりつけの先生方は更新がむずかしいと強く言えないと思いますが、当院では画像検査できちんと脳の状態を確認し、運転免許の更新がむずかしいときは、はっきりそう告げています。それも当院の役割だと考えています」

遠方から通院する方の負担を減らせるよう初診で診断

物忘れ外来は、県南地域はもちろん、県北地域や茨城県西部、群馬県東部、埼玉県北部など遠方の患者さんも受診します。そのため、通院の負担に配慮し、同院では初診で診断をつけることが多いそうです。初診の方には、事前にご家族にIADL(手段的日常生活動作)の状態などを記入するアンケート用紙を送り、受診当日は血液検査、頭部CT、神経心理検査を行って、ご家族に問診した上で診断をつけます。

「初診でお話を伺い、別の日に検査し、その結果をまた別の日にお伝えすると、合計3回も通院していただくことになりますから、なるべく初診で診断結果を伝えるようにしています。MRI検査や脳血流シンチグラフィなどが必要な方は初診で診断することはできませんが、どのような疾患の可能性があるかをその日のうちにお話ししています」

認知症のような症状があり、神経心理検査の点数が低くても、認知症ではない病気の場合もあるため、須田先生はその見極めに注意を払っています。うつ病によって認知機能が低下していたり、意欲低下により神経心理検査の質問に答えられなかったりすることもあります。また現在は、梅毒の感染で認知機能が低下している人も増えているそうです。

「身体疾患からの症状なのか精神疾患からの症状なのかを見極めて治療を行うのが精神科医の役目です。身体疾患からの一時的な認知機能低下を見逃さず、治療につなげています」

認知症の進行予防として会話や社会参加を勧奨

認知症と診断がついた場合、須田先生はご家族には病名を告知しますが、ご本人に告知ができるかどうかは判断がむずかしいこともあるそうです。最終的には会話のなかでご本人が認知症であることを受け入れられるかどうか把握して、告知するかを判断します。

「85歳では約3割、90歳では約半数が認知症の診断がついて説明すると、高齢の方は『じゃあ仕方ないね』と受け入れられることが多いですが、60代、70代の方はむずかしいこともありますね。そのようなときは『年齢相応の物忘れがあります』と説明しています。ただし、基本的には、ご本人には病名を“知る権利”があると思っています」

会話は脳を活性化することから、ご家族には進行予防のために、できるだけ話しかけるようアドバイスしています。また、家に引きこもらず、外に出て社会参加することも勧めます。ご家族のなかには、認知症であることを受け入れられず、ご本人に対して感情的になる方もいます。須田先生は「適切な対応について繰り返しお話しするしかないですね」と言います。

「ご家族の負担を軽減するため、ほかのご家族にも介護に加わっていただいたり、ショートステイなど介護保険サービスを利用していただいたりして、ご本人とご家族がお互いに余裕が持てるようになるまで距離を取ることをお勧めすることもあります」

ご家族にうつ病の症状があると判断したら、院内の他の医師に診てもらうようにしています。

MCIの診断がついたら生活習慣病の治療継続を指導

MCI(軽度認知障害)への対応について、須田先生は「MCIに対しては今のところ、有効な薬はありませんが注意深く観察することが必要です」と言いながらも、生活習慣についてアドバイスをしているそうです。

「生活習慣病は認知症のリスクとなりますから、メタボリックシンドロームであれば体を動かすことをお勧めし、高血圧や糖尿病があれば治療を継続してコントロールするようお話ししています」

また、一部の睡眠薬では、長期間服用すると認知症のリスクが高まる可能性があることから、他の睡眠薬に切り替えることがあります。3ヵ月から半年ごとに受診してもらい、認知症の治療開始のタイミングを見逃さないよう注意します。

ご家族の負担を減らし認知症を受け入れられる社会に

須田先生は「認知症の診断がご本人とご家族を苦しめるようなことになってはいけない」と言います。しかし、認知症に対しネガティブなイメージを抱いている人が少なくないと須田先生は感じています。その背景には、ご家族に責任を背負わせすぎる社会の実態があります。

「認知症の方が線路に侵入した踏切事故で、鉄道会社がご家族に損害賠償を求めたことがありましたし、BPSD(周辺症状)のある方にも世間の目は厳しいですよね。認知症になるとご家族に重い負担をかけてしまうと思っているから、認知症という診断を受け入れられない方が多いのだと思います」

「介護うつをなくすためにも、ご家族だけに担わせるのではなく、地域で役割分担をしていく社会を目指す必要があります」と須田先生は指摘します。それには、地域でケアを引き受ける介護職の待遇改善も関わってきます。

「介護施設で適切な介護をしていただくには、十分な報酬が必要です。しかし、国に十分な予算がない状況ですので、これからの日本の将来を考えながら色々と工夫していくことが重要です」

認知症の人を地域で支える社会に近づけるために、須田先生は、介護保険審査会委員を務めたり、認知症カフェの運営者が開催するイベントに参加したりして、行政や地域との連携も深めています。

「認知症になることは不幸なことではないということを、ご本人にも地域の方にも理解していただけるよう啓発していきたいですね」と語る須田先生の奮闘は続きます。

 

 

取材日:2020年9月17日
自治医科大学附属病院の外観

自治医科大学附属病院

〒329-0498
栃木県下野市薬師寺3311-1
TEL:0285-44-2111

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