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セラピストを中心に認知症カフェを運営
認知症の人とご家族が笑顔で暮らせる地域づくりに注力
<東京都目黒区 国家公務員共済組合連合会 三宿病院>

神経内科 部長 認知症疾患医療センター センター長 清塚鉄人先生 神経内科 部長
認知症疾患医療センター センター長
清塚鉄人先生

1959年に開設された三宿病院は、21の診療科を有する総合病院として、また東京都の二次救急指定病院として幅広い医療を提供しています。認知症の診療にも注力しており、2015年には目黒区の地域連携型認知症疾患医療センター(以下、センター)に指定され、外来診療はもちろん、多職種で編成された認知症ケアチームによる病棟回診、認知症看護外来、認知症カフェの運営など、さまざまな活動に取り組み、認知症の人とご家族の生活を支援しています。

地域密着型の総合病院で専門的な診断・治療を提供

2015年のセンター開設当初からセンター長を務めているのは、神経内科部長で日本認知症学会専門医・指導医の清塚鉄人先生です。前任の大学病院では神経難病を中心に診療していた清塚先生が、認知症診療に本格的に携わるようになったのは、2007年に同院に着任してからのことです。神経内科の患者さんに認知症の人が多く、さっそくもの忘れ外来を設置したそうですが、当時は抗認知症薬が1剤しかなく、薬剤での病状コントロールに難しさを感じていたと言います。しかし、ご本人やご家族の思いに耳を傾け、生活面やご本人への対応の仕方をアドバイスする中で、治らない病気でもうまく付き合っていけば穏やかに生活できることに気づき、「薬物療法だけでなく、ご本人やご家族の生活支援にも力を入れるようになりました」と話します。

神経心理検査の一環として嗅覚検査を実施

センターのもの忘れ外来には月に約40人、年間で500人ほどの新規受診があり、神経内科医3名のほか、認知症看護認定看護師、言語聴覚士、精神保健福祉士など複数の専門職が連携して診療にあたっています。

初診時には医師が問診、長谷川式簡易評価スケール、MMSE(認知機能検査)でスクリーニングし、言語聴覚士がさらに詳細な神経心理学的検査としてFrontal Assessment Battery(FAB)、Alzheimer’s Disease Assessment Scale-cognitive component-Japanese version(ADAS-Jcog.)などを行います。さらに同院では、神経心理学的検査の一環として嗅覚検査を実施しています。清塚先生は、「レビー小体型認知症では、病初期に記憶障害が目立たない場合でも嗅覚の低下がみられることがあるといわれており、早期診断の観点から注目しています」と、嗅覚検査導入の理由を話します。また、長谷川式簡易評価スケールやMMSEは、検査を受けた人が感情を害することもありますが、嗅覚検査はにおいを当てるクイズのようで、楽しんで取り組む人が多いそうです。

そのほか、MRIや血液検査、必要に応じて脳血流検査や、レビー小体型認知症の特徴である錯視や幻視を検出するパレイドリアテストなども行い、慎重に診断しています。その結果、アルツハイマー型認知症が約半数を占め、次にMCI(軽度認知障害)、レビー小体型認知症、脳血管性認知症と続き、神経難病や精神疾患が原因の認知症の方も少ないながらおられるそうです。

診断後は生活の質の維持を重視し、生活面へのアドバイスも

病名を伝える際、清塚先生は“早期診断、早期絶望”にならないよう、「長く付き合っていく病気ですが、いい薬もありますし、進まないようにさまざまな対策も取れますので、しっかりコントロールしていきましょう」と、希望を持ってもらえるよう配慮しています。診察ではご家族から「きちんと薬を飲んでいるのに、物忘れが治らない」と訴えられることもあるそうですが、「物忘れがあっても、笑顔で毎日を過ごせることを大切にするといいですよ」と伝え、できないことを数えるのでなく、1日単位、1週間単位で「いいこと探し」をしてみるようアドバイスしています。

かかりつけ医からの紹介で受診した方は、基本的に薬物療法で症状が安定したところで紹介元に逆紹介しています。ただし、逆紹介後に急な病状変化やBPSD(周辺症状)が強く出てコントロールが難しくなったときには、再度の相談・紹介も受け入れており、かかりつけ医と連携しながら認知症の人とご家族が住み慣れた地域で長く暮らしていけるようサポートしています。

看護師主導の取り組みも充実

認知症看護認定看護師 瀬川愛さん 認知症看護認定看護師 瀬川愛さん

同院には清塚先生のほか、看護師、言語聴覚士、薬剤師、ソーシャルワーカーの多職種による認知症ケアチームが編成されており、病棟スタッフの要請を受けて週1回ラウンドを行っています。チームの中心となっているのが、認知症看護認定看護師の瀬川愛さんです。病棟からラウンド要請があると、まず瀬川さんが病棟へ足を運んで状況を確認します。その後チーム内で情報を共有し、ケアの方向性を話し合った上でラウンドを行い、多職種の視点からアドバイスしています。

「相談内容は、食事を食べない、ケアを拒否するなど、スタッフが困っていることが前提になっている場合が多いのですが、ご本人の視点に立って考えてみるとケアのヒントが見つかることもあります。ご本人の思いを十分引き出せず対応に苦慮している場面もあるので、病棟スタッフには、まずご本人に『困っていることは何ですか?』と聞いてみるよう勧めています」(瀬川さん)

実際にご本人に尋ねてみると、痛みがつらくて食事が取れないことや、皮膚がかゆくてベッドサイドモニターを外してしまうなど、問題とされていた行動の原因がわかることが多く、ご本人が何に困っているかを引き出すために、観察するポイントや質問の仕方を工夫するよう伝え、スタッフと一緒にケアを行っています。また、月1回の認知症看護外来では、予約制でご家族からの相談や悩みに継続的に対応しています。高齢者の多い三宿病院では、院内デイケアを立ち上げ患者さんへのサービスの向上とともにスタッフへの啓発にもつなげています。さらに、認知症看護リンクナース会を運営し事例検討会を通して看護の質向上にも取り組んでいます。

「センターとして、認知症ケアの面でも地域の方々から必要とされるよう、院内に限らず地域の多職種の皆さんとも連携を図っていきたいと思っています」(瀬川さん)

センターの受付窓口として、受診の相談にきめ細かく対応

ソーシャルワーカー 川路裕子さん ソーシャルワーカー 川路裕子さん

ソーシャルワーカーの川路裕子さんは、物忘れの症状を心配するご本人やご家族、地域包括支援センターなどからの相談に対応し、症状を確認した上でもの忘れ外来の予約を取り、受診につなげています。ご本人やご家族は「物忘れが進んでいます」などと漠然と話すことが多いため、困り事の内容が明確になるよう「探し物が多くなりましたか?」、「約束を忘れてしまうことはありますか?」と、具体的に質問を重ねていきます。

聞き取った内容は電子カルテで医師や他のスタッフと共有しており、ご家族から「認知症という言葉は使わないでほしい」と要望されるなど、配慮が必要なときはクラークや看護師に直接連絡を入れて、場合によっては受診日に川路さん自身が受付に出向いて対応することもあるそうです。また、初診時には診察のほかに検査を受ける必要があり、時間がかかるため、ご本人とご家族が院内で少しでも快適に過ごせるよう気を配っています。

「初めての受診でご本人やご家族の思いと病院の対応に食い違いがあると、その後の診療がスムーズに進まなくなることもあります。ご本人・ご家族には診察前の準備や受けていただく検査の内容、受診当日の流れを事前にしっかり説明し、配慮が必要な点はスタッフと共有しています」(川路さん)

言語聴覚士が神経心理検査を担当

言語聴覚士 認知症ケア専門士 前田順子さん 言語聴覚士 認知症ケア専門士
前田順子さん

言語聴覚士で認知症ケア専門士の資格も持つ前田順子さんは、入院中の認知症の人の摂食嚥下障害や高次機能障害、言語障害に対する評価とリハビリテーションを行うほか、もの忘れ外来では鑑別診断のための神経心理検査も担当しています。前田さんはリハビリテーションを進めるにあたって、「決められたプログラムをセラピストのペースで進めるよりも、認知症のタイプや重症度など一人ひとりの背景に合わせて柔軟に変更しながら実施することを心がけています」と話します。

もの忘れ外来で神経心理検査を行う際には、検査を受ける方がその内容を理解しているか、検査のペースが速すぎないか、疲れていないかなど、その方のコンディションを確認しながら進めています。難聴や老眼など聴力・視力が低下していると検査結果に影響を及ぼすことから、補聴器や数種類の老眼鏡を用意したり、筆談でカバーしたりと、よい状態で検査が受けられるよう環境づくりにも配慮しています。

「言語聴覚士が神経心理検査を行うことのメリットは、検査の結果をリハビリテーションに取り入れて、その方の生活にアプローチでき、ADL(日常生活動作)の評価ができることだと思います。医師や看護師、ソーシャルワーカーなど多職種で連携しながら、私たちセラピストも認知症の方とご家族の生活支援に積極的に関わっていければと思っています」(前田さん)

認知症カフェをきっかけに外来受診につながることも

同院では2016年から、前田さんらセラピストを中心に認知症カフェであるDカフェ『せらぴあ』を運営、月1回のペースで開催しています。同院に通院していなくても、誰でも予約なしで参加でき、毎回30人ほどの人が集まるそうです。「アロママッサージやコグニサイズなどのプログラムを用意することもありますが、皆で一緒に何かに取り組むというよりも“お茶を飲みながら、それぞれが自由に過ごせる居場所”をつくりたいと思っています」と、せらぴあの趣旨を話す前田さん。スタートから4年が経ち、その役割が広がってきていると感じているそうです。

「病院には行きたくないけれどカフェでお茶を飲むなら行ってもいいとおっしゃっていた方が、せらぴあへの参加をきっかけにもの忘れ外来の受診につながることもあります。また、ご本人が亡くなられた後も通い続けてくださるご家族もおられ、グリーフケアとしても活用していただいています。せらぴあが地域と病院をゆるくつなぐ場所になれるとうれしいですね」(前田さん)

認知症の人とご家族を幅広く支援できる地域づくりを目指して

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、病院の受診を控える動きが広がりました。せらぴあの開催をはじめ、認知症のご本人・ご家族を対象としたイベントや交流会も中止や延期を余儀なくされ、清塚先生は「認知症が進んでしまった方も少なくありません。認知症の方やご家族との交流と感染症対策の両立が今後の課題と考えています」と話します。

診察中の清塚先生 診察中の清塚先生

「認知症は医療につなげるだけがゴールではなく、認知症の方とご家族の生活を幅広く支えていくことが大切です。そのためには、医療や介護、行政、地域住民の方々と緊密に連携する必要があると思います。感染症などで外出や人との接触が制限され、従来のような対面での交流は難しくなると思いますが、ソーシャルディスタンスを保った状態で継続できる取り組みを考えていきたいですね」(清塚先生)

院内の専門職によるチームアプローチで、質の高いきめ細やかな医療を提供するとともに、認知症の人とご家族を支える地域づくりにも力を入れる、三宿病院の皆さん。これからもそれぞれの専門性を発揮して、認知症の人とご家族が安心して暮らせる地域づくりを進めていきます。

 

 

取材日:2020年12月16日
三宿病院の外観

国家公務員共済組合連合会 三宿病院

〒153-0051
東京都目黒区上目黒5-33-12
TEL:03-3711-5771

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