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認知症疾患医療センターの指定を受け、公立病院として良質な医療の提供を
<静岡県静岡市 静岡市立清水病院>

病院参与 認知症疾患医療センター長 畑隆志先生 病院参与 認知症疾患医療センター長
畑隆志先生

静岡市立清水病院は、1933年の開設以来、90年近くにわたって、地域住民の健康に貢献してきました。同院は、静岡市の中で最も高齢化率が高い清水区にあることから、認知症の人への対応も考慮し、2016年には認知症疾患医療センターを設置し、専門性の高い認知症医療を提供しています。

一般病院で一般診療とともに認知症医療を行う

神経専門病院である静岡てんかん・神経医療センター、精神科病院である溝口病院に次いで静岡市で3番目に指定された認知症疾患医療センターです。病院参与で認知症疾患医療センター長である畑隆志先生は、「神経と精神科の専門の病院、そして一般病院である当院と、それぞれ違う特徴を持つ病院を指定しようというのが静岡市の意向でした」と、指定の経緯を説明します。

「内科の患者さんが認知機能の低下をきたすこともありますし、外科で入院している患者さんが認知症を合併していることもあります。一般診療と認知症診療は密接に関わっているので、一般病院に認知症疾患医療センターが設置されていることで、その両方を提供することができ、それが市内の他のセンターと異なるところでしょう」(畑先生)

公立病院であるため、もともと行政の福祉担当者などとのパイプもあり、介護や福祉との連携が取りやすいのも同院の特徴です。

また、同院には高齢の患者さんも多いことから、神経内科以外の医師も認知症を理解して適切な診療ができるよう、カンファレンスなどで他科の医師やスタッフに認知症についての専門知識を伝えています。

「地方ですから、当院の神経内科医は3人のみと医師の層は都心に比べると薄く、認知症以外の診療も行っています。ほかの科の先生方が専門を問わず認知症を診ることができれば、層は厚くなっていくと考えています」(畑先生)

ご本人に配慮し、ソフトな表現を使って告知

認知症疾患医療センターの役割として、かかりつけ医から紹介を受けて診察・鑑別診断も行っていますが、同院で認知症の治療を始める人の多くは、他の病気で通院していた患者さんです。畑先生は、「生活習慣病で通っていた方が外来で様子がおかしく、検査をしたら認知症とわかるようなこともあります」と言います。

鑑別診断には、初日に病歴の確認やMRIを実施し、2回目の受診で脳血流を調べるSPECT、MMSE(認知機能検査)などの神経心理検査を行い、認知症状の程度や原因を特定します。認知症と診断がついても、車の運転免許証更新に関わる場合は別として、ご本人には「認知症ではないけれど認知機能が落ちていますね」と、少しソフトな伝え方をしています。

「ご本人は記憶障害があるだけで、感情は今までどおりありますから、認知症だと告知されるとショックを受けます。病気だと告げてショックを与える必要はなく、軽率に告知を優先させてはならないと考えています。日常生活や社会生活が営めないというのが認知症の定義ですが、社会生活が営めるよう周りがサポートすればよいのです」(畑先生)

認知症の根治薬を求めて治験にも注力

スタッフの皆さんは認知症の根本治薬薬の誕生を強く願っており、同センターでは治験にも力を入れています。治験とは、新しい薬や医療機器開発の最終段階の試験であり、基礎研究や動物実験等で有効性や安全性が認められた薬の候補を、人を対象として有効性・安全性を検証するために行われる臨床試験のことです。

同院では、治験・臨床研究管理室に所属する治験コーディネーターが中心となって治験を進めています。治験コーディネーターは、医師のもとで治験の進行を管理するとともに、治験に参加する患者さんやご家族のサポートをする役割を担っています。

「治験にご参加いただく患者さんやご家族は『これ以上進行するのを抑えたい』『少しでも症状が改善すればいい』という気持ちで協力してくれます。患者さんやご家族に寄り添いながらも、科学的な視点も重視しつつ日々の業務にあたっています」

治験薬は必ずしも効果があるものばかりではなく、予期しない副作用が出る可能性もありますが、そのことを理解したうえでご参加いただくため、患者さんの善意を無駄にしないよう全力で取り組んでいるとのことです。

精神保健福祉士が病院と地域・患者さんをつなぐ

認知症疾患医療センターでは、認知症の鑑別診断、専門医療相談の対応に加え、院内外で講座を開催し、地域に認知症を知っていただくための活動をしています。同センターに所属する精神保健福祉士は、同院と地域や患者さんをつなぐ役割を担っています。精神保健福祉士として、本当にたいへんな思いをしているご家族がどのようなことに困っているかを把握するために、まずはご家族の話に耳を傾け、アドバイスをする際も、一方的に提案するのではなく、ご家族と一緒に解決策を考えていくことを心がけています。

認知症の診断がついたあとに医師の要望で患者さんやご家族と関わる場合もあります。地域支援の必要な患者さんには、患者さんまたはその家族等の支援者を地域包括支援センター等の地域機関につなげます。そして、医療・介護の連携を通して、患者さんやご家族を支援していきます。

介護保険の話をするときも、「“介護保険”という言葉を聞くだけで落ち込む方もいらっしゃるので、お勧めする場合でも、慎重に言葉を選ぶようにしています」

精神保健福祉士として、同センターの窓口役を務めることが多いことから、同院を訪れるケアマネジャーと顔を合わせたら会話を交わし、何か困ったことが起きたときに相談し合える関係づくりも行っています。

認知機能が低下した入院患者さんには対応を工夫

同院は463床の病床を備えており、身体疾患の治療で入院する患者さんに認知機能の低下があることも少なくありません。入院によって環境が変わることで、混乱したり不安になったりする患者さんも少なくありません。認知症看護認定看護師は、日常の業務中や看護スタッフを対象とした勉強会などで認知症の人への適切な対応を指導し、看護スタッフからの相談にも乗っています。

「スタッフが対応に困っているときは、実は患者さんも場所が変わったり見知らぬ人に囲まれたりして困っているのです。何に困っているのか原因を探り、対処法を考えて適切なケアを行うことで患者さんは落ち着くことができます」

看護スタッフだけで解決するのが難しいときは、入院患者さんの対応に関わります。その際は、目線の高さを合わせ、笑顔で「あなたの味方ですよ」と伝えるように話しかけると言います。「関わり始めのころは困ったような様子の表情を見せていた方が、やがて笑顔になって退院してくださるとうれしいですね」と言葉を続けます。

また、認知症看護認定看護師として、スタッフに指導するだけでなく、ご家族にも知恵を伝授します。

「皆さん、最初に悩まれる、コミュニケーションの取り方や接し方についてお話ししています。それから、認知症の方の言動にご家族がいら立ってしまうこともあると思いますので、気持ちのコントロールの仕方をご説明しています」

患者さんの病気への向き合い方を一緒に考える

同院で行われる神経心理検査は臨床心理士が担当しています。検査を受ける患者さんは緊張していることが多いそうですが、同院の臨床心理士は「緊張も悪いことではない」と患者さんに説明しています。

「緊張するからこそ本来の力が出ることもありますし、緊張して受けることを前提に検査の評価が考えられているはずですから。それでも負担はあると思いますので、会話などでなるべく負担を軽減し、ご本人のペースを大切にして検査に取り組んでもらっています。心理検査には患者さんの協力が必要ですし、思うように回答できないと落ち込む方もいるので、心理検査には患者さんへのフォローが必要と考えています」

また、臨床心理士は認知症に限らず患者さんの心理面接も行っています。心理検査と心理面接はアプローチこそ違いますが、共通しているところも多いと言います。

「患者さんは、“その病気を経験した人生”という新たなステージにあると言えます。認知症は特にその意味合いが強いです。そのステージで病気や日々の生活に患者さんがどのように向き合い、まわりがどのように支えていくとよりその人らしく生きられるのか、一緒に考えていくことを目的としています。心理検査はそれを考えるための大事なコミュニケーションツールのひとつです」

認知症の人の幸せのためには正しい知識の普及を

清水病院の皆さん 清水病院の皆さん

「特定の病院だけが、あるいは特定の地域だけが良質の医療を提供するのではなく、どの地域・医療圏であっても、均質な医療と介護を提供できるのが理想的です」と畑先生は指摘します。そのためには、認知症についての正しい知識の普及が必要です。ガイドラインや教育などによって、均質な医療が広まってもらいたいというのが畑先生の願いです。

また、認知症の人の幸福を考えたとき、ご家族など周囲の人にも正しい知識を伝えることも重要です。今年は新型コロナウイルスの影響で中断していますが、同院ではご家族や認知症に関心のある人を対象とした連続講座を開催しています。

「認知症は病気ではなく、避けられないひとつの状態だというイメージを持っていただきたいのです。対応次第で認知症の人の症状も変わってくるので、認知症の人の幸せのためには周りの対応が大切だということを、これからも地域の方に繰り返し伝えていきたいですね」(畑先生)

 

 

取材日:2020年10月12日
静岡市立清水病院の外観

静岡市立清水病院

〒424-8636
静岡県静岡市清水区宮加三1231
TEL:054-336-1111

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